10年前の4月24日、バングラデシュの首都ダッカ近郊で発生した縫製工場ビルの崩壊事故は、1136人もの犠牲者を出す大惨事となった。ファッション産業が急速な成長を遂げる中、安全管理の欠如が明るみに出たこの悲劇は、バングラデシュの縫製工場労働者の厳しい現実を浮き彫りになった。
バングラデシュは安い労働力を背景に、世界的なアパレル企業の「ファスト・ファッション」の主要な製造拠点として台頭している。しかし、利益追求と生産性の向上が優先される中で、労働者の安全や労働条件への配慮が軽視されるケースが多く見受けられた。
この悲劇をきっかけに、世界中のアパレル企業や国際社会はバングラデシュの労働者の権利保護と安全対策の重要性に目を向けるようになった。欧州などの多くのアパレルブランドは、安全基準を満たさない工場での製造を禁じる国際協定に署名し、バングラデシュ政府も労働法の改正や安全対策の強化に取り組んだ。
10年の歳月が経過した今でも、バングラデシュの縫製工場労働者は依然として厳しい労働条件に直面している。低賃金、長時間労働、安全対策の不備などが現実として残っており、労働者の権利保護のためにはまだまだ改善の余地がある。
専門家たちは、労働災害に遭遇した労働者への補償を含む法的な枠組みの整備が必要と訴えている。また、アパレル企業自体が生産の過程での労働者の安全を確保することが、環境持続可能性や社会的責任の一環として重要だと指摘している。
バングラデシュの縫製工場ビル崩壊10年目の教訓は、ファッション産業の闇を浮き彫りにし、安全と人権の重要性を改めて認識させるものとなった。労働者の権利を守りながら、持続可能な発展に向けた努力が求められる中で、世界のファッション産業は新たなる展望と責任を追求していく必要があるだろう。