タイ チェンライ州の防災対策の課題

9月13日にタイのチェンライ州で大規模な鉄砲水が発生し、甚大な被害をもたらしました。被害が拡大した一因には、避難準備や警報システムの不備があり、これが救助活動の遅延を招いたと考えられています。

メーサイ市役所の広報担当者によれば、洪水時には十分な救助隊が派遣されず、多くの住民が屋根の上に避難することを余儀なくされました。

洪水警報についても改善の余地があるとされています。気象局が発する警報は、専門用語が多く一般の住民には理解しづらいことが問題とされており、赤や黄色などの色分けによる簡単なシステムが導入されれば、住民の避難が円滑になるとの指摘があります。加えて、堤防や貯水池などの水害対策インフラの整備が急務であるとの意見も挙げられています。

また、チェンライ州はバンコクから遠く離れた国境地帯であることから、首都の政策決定において優先度が低いと感じる住民も少なくありません。州知事の任命制度についても、頻繁な異動や中央集権化の影響で地域の実情に即した対応が困難になっていると不満が高まっています。知事の選出制への変更も議論されていますが、現地では政治化のリスクも懸念されています。

さらに、周辺国との経済活動や環境問題も地域の課題です。ミャンマーとの国境付近では大規模なトウモロコシ栽培が行われており、12月頃にはその焼畑から出る煙によるPM2.5汚染が深刻化します。これにより住民の生活の質が低下し、長期間にわたり汚染された空気を吸わざるを得ない状況が続く見込みです。

チェンライ州の状況は、中央の政策が地域に反映されにくいことや、自然災害への備えが十分でないことを浮き彫りにしています。タイ政府は、住民の安全と生活の質を守るため、より効果的な警報システムやインフラ整備に向けた取り組みが必要です。