2025年12月26日
タイの首都バンコク近郊で11月下旬から12月上旬にかけて開催された「第42回タイランド・インターナショナル・モーターエキスポ2025」において、タイ自動車市場の地殻変動が浮き彫りとなった。急速なBEV(電気自動車)化を進めてきた同国だが、11月に発生した南部での「300年に一度」の記録的豪雨が、消費者の意識に大きな変化をもたらしている。

洪水被害で露呈したBEVの「脆弱性」
今回の豪雨では、都市部でも多数の車両が水没被害に遭った。注目されているのは、被災後の「再生の可否」だ。内燃機関(ICE)車であれば、浸水の程度によっては洗浄や部品交換で修理可能なケースもあるが、床下に大型バッテリーを積むBEVは、浸水が即「全損」につながるリスクが高い。
現地の自動車保険業界からは、BEVの損害率悪化に伴う保険金の支払い増に悲鳴が上がっており、来年以降の保険料高騰や引き受け拒否を懸念する声も出ている。こうした状況を受け、タイ国内では「わが国の環境でBEVは現実的なのか」という懐疑的な見方が急速に広がっている。
日系シェアに下げ止まりの兆し、カギは「ハイブリッド」
2025年1月〜10月の累計新車販売データでは、日系ブランドのシェアは61.3%と、前年比で3.5ポイント低下した。しかし、これは中国系ブランドの攻勢だけが理由ではない。
シェア低下の主な要因の一つは、日系大手・三菱自動車の主力モデル「エクスパンダー」シリーズがモデル末期の端境期にあったこととされる。同社は今回のモーターエキスポで改良新型「エクスパンダークロスHEV」を発表。洪水時でも安心感のある高い地上高と、信頼性の高いハイブリッドシステム(HEV)を組み合わせたモデルは、来場者の強い関心を集めている。
市場は「現実的な電動化」へ回帰か
モーターエキスポの予約状況では、依然としてBEVが過半数を占めるものの、トヨタの「ヤリス・クロス」など日系のハイブリッド車が人気車種トップ5に名を連ねるなど、実用性を重視する層の支持は根強い。
深刻な洪水被害と、それに伴うインフラ・保険リスクの露呈により、タイの自動車市場は「一辺倒のBEV化」から、信頼性と環境性能を両立した「ハイブリッド車」を見直す、より現実的なフェーズへと移行しつつある。
