2024年12月10日
ネパール南部バリヤプールで、5年に1度の「ガディマイ祭り」が開幕した。ヒンドゥー教の女神ガディマイに捧げるため、水牛約1万2,000頭、ヤギ約8,000頭がいけにえとして供えられる予定だ。この祭りは世界最大規模の動物供犠の儀式として知られ、動物愛護団体からは「虐殺」との批判も上がっている。

伝統としてのガディマイ祭り
ガディマイ祭りは130年以上続く宗教的伝統であり、信者たちは動物をいけにえに捧げることで「女神が願いを叶えてくれる」と信じている。儀式は「く」の字型の刃物を用い、生きたまま動物の首を切るという方法で行われる。
祭りはインド国境近くで開催されるため、いけにえとなる多くの動物は隣国インドから違法に持ち込まれている。インド政府はこれを阻止するため、国境沿いに検問所を設置して取り締まりを強化している。
動物愛護団体の反発と社会の変化
動物愛護団体「ヒューマン・ソサエティー・インターナショナル」によれば、2009年には約50万頭の動物が犠牲となったが、2019年には約25万頭に減少。徐々にいけにえの数は減っているものの、依然として大規模な儀式として続いている。
同団体のインド支部代表は、「このような儀式は現代社会にはそぐわない」と強く非難。ネパール最高裁もいけにえ儀式の廃止に向けた措置を講じるよう政府に命じている。しかし、祭り初日にはネパール副大統領も出席するなど、政府内でも対応が分かれているのが現状だ。
国際社会の視点とネパールの未来
ネパールでは、宗教的伝統と現代的価値観の衝突がさまざまな場面で見られる。ガディマイ祭りもその一例であり、信仰の自由を尊重しつつ、倫理的な課題にも向き合う必要がある。
近年、日本をはじめとする国際社会との関係強化に伴い、ネパール国内でも動物愛護や環境保護の意識が高まりつつある。こうした変化が、今後ガディマイ祭りの在り方に影響を及ぼす可能性があるだろう。