ネパールで急成長するQRコード決済、日本との違いとは?

2025年2月5日

デジタル決済が主流に、ATM利用は減少傾向
ネパールではATMや小切手の利用が減少し、QRコード決済を中心としたデジタル決済が急速に普及している。ネパール・ラスラ銀行(中央銀行)が発表した「2023-24年決済インサイトレポート」によると、QRコード決済の年間取引額は前年比103.66%増の4,997.9億ルピーに達した。

QR決済急成長の背景
ネパールでQRコード決済が急速に普及している背景には、いくつかの要因が挙げられる。

第一に、現金決済への依存度の高さと金融包摂の進展がある。ネパールではこれまで現金決済が主流であり、銀行口座を持たない人々も多かった。しかし、スマートフォンの普及により、銀行口座がなくても利用できるQRコード決済や電子ウォレットが広まった。

第二に、新型コロナウイルスの影響で人々の生活がオンライン化し、ATMや銀行窓口に行く機会が減少したこともデジタル決済の普及を後押しした。

さらに、銀行や企業がコスト削減のためにQRコード決済を推奨している点も見逃せない。これにより、現金の取り扱いやATM運営にかかるコストを削減できるほか、決済スピードの向上にもつながっている。特に小規模店舗や露店でも導入が進んでおり、QRコード決済はあらゆる場面で利用可能となっている。

また、2024年3月にはFonepayがインドとのクロスボーダーQR決済を開始し、インド人観光客の利用が急増した。わずか5か月で134,701件の取引が行われ、取引総額は3億2,100万ルピーに達している。観光業の発展を支える新たな決済手段としても注目されている。

日本との違い—なぜネパールではQR決済が急速に普及するのか?
ネパールのQRコード決済の普及速度は、日本と比較すると非常に速い。その背景には以下のような違いがある。

日本では既存の決済インフラが充実しており、クレジットカードや交通系ICカードが広く利用されているため、QR決済の必要性が比較的低い。一方、ネパールではクレジットカードの普及率が低く、よりシンプルなQR決済が利便性の高い選択肢となっている。

また、加盟店側の導入コストも大きく異なる。日本ではクレジットカード決済端末の導入が進んでいるが、その運用コストが高いため、中小店舗では現金決済が根強い。一方、ネパールではQRコード決済の導入コストがほぼゼロで、露店や小規模商店でも簡単に導入できる。

さらに、スマートフォンの普及率とユーザー層の違いも影響している。日本では高齢者層の現金信仰が強く、スマートフォン決済の利用が進みにくい。しかし、ネパールでは若年層を中心にスマートフォンを使った決済が主流になっており、現金を使う機会が減っている。

今後の展望—ネパールのデジタル決済はどう進化するか?
QRコード決済の急成長により、ネパールでは現金不要のキャッシュレス社会が現実味を帯びてきている。銀行間送金や即時決済サービスも進化しており、企業間取引(B2B)でもデジタル決済の活用が拡大する可能性が高い。

日本でもキャッシュレス化が進んでいるが、その普及速度はネパールほど急速ではない。ネパールのように、現金決済に代わる手段が一気に普及するケースは、日本の決済市場の未来を考える上で示唆に富んでいると言えるだろう。