2024年11月10日
ネパールで9月末に発生した記録的な豪雨が、経済やインフラに甚大な被害をもたらした。最新の報告によると、被害総額は4,668億ルピーに達し、当初の予想を大幅に上回る結果となった。

壊滅的なインフラ被害と経済的影響
ネパール内務省傘下の国家防災・管理庁(NDRRMA)が発表した最新の調査によると、9月26日から28日にかけての豪雨により、各地で洪水や土砂崩れが発生。特にインフラ部門の被害が深刻で、経済損失の83%以上に相当する3,892億ルピーが道路や水道、通信、エネルギー関連施設の破壊により失われた。
道路・高速道路は41箇所が損傷し、復旧には2,798億ルピーが必要とされる。また、26の水力発電施設が被害を受け、3,018億ルピーの損失が発生。この影響で、最大の発電所である**上タマコシ水力発電所(456MW)**が運転を再開できず、合計980MWの発電が停止。今冬の電力供給が不安視されている。
通信分野では446の設備が破損し、1億5,230万ルピーの損害。さらに、1,678箇所の給水・衛生設備が失われ、5,900億ルピー規模の影響が報告されており、安全な飲料水の供給が制限されることで水系感染症の発生リスクが高まっている。
橋梁の被害も大きく、44箇所が損傷し、復旧費用は10億4,000万ルピーに上る。
社会的影響—住宅・教育・医療の損壊
住宅被害も深刻で、5,996棟が完全に倒壊、13,049棟が損傷。10,807世帯が避難を余儀なくされ、16,243人が公的シェルターでの生活を余儀なくされている。
医療施設も影響を受け、6つの施設が完全に崩壊、43の医療機関が損傷。災害後の健康被害への対応が難しくなっている。また、6校が完全崩壊、136校が損傷し、多くの子どもたちの教育が中断された。
人的被害—死者249人、行方不明18人
最新の報告によると、この豪雨で249人が死亡、178人が負傷し、現在も18人が行方不明。最も被害が大きかったのはバグマティ州で208人の犠牲者が確認されている。
救助活動も大規模に行われ、17,000人以上が救出された。カトマンズ盆地やコシ州、マデシュ州、バグマティ州、ガンダキ州などで、14,800人以上の警察官が動員されている。
農業・生産部門への影響—食糧危機の懸念
生産部門では、6万5,380ヘクタールの農地と26,698頭の家畜が被害を受け、損失額は588億ルピーに達する。灌漑プロジェクト7件も被害を受け、被害額は135億ルピーと推計されている。
農業と畜産の損失は食糧供給にも影響を与え、今後の食糧危機への懸念が高まっている。
日本との関係—防災協力の必要性
ネパールの自然災害対策において、日本はこれまでにもインフラ整備や防災支援を提供してきた。特に、JICA(国際協力機構)による耐震住宅プロジェクトや、日本の技術を活用した水力発電の開発などが進められている。今回の災害を受け、日本とネパールの協力関係がさらに強化されることが期待される。
