インドネシアで急成長する移動式カフェ Jago Coffee、シリーズAで600万ドルを調達

2024年10月21日

世界有数のコーヒー生産国であるインドネシアでは、近年コーヒー消費の急増が見られる。国際コーヒー機関のデータによれば、2023年の国内消費量は前年比18.2%増を記録し、世界で3番目にコーヒーを多く消費する日本に迫る勢いだ。そんな中、独自のビジネスモデルで市場に革新をもたらしているのが、移動式カフェサービスを展開する「Jago Coffee」だ。

アプリで注文、バリスタが自転車で配達

Jago Coffeeは、従来のコーヒーショップやデリバリーサービスとは異なり、バリスタが電動アシスト付きワゴン自転車に乗り、指定された場所までコーヒーを届ける「コーヒーカート」型のサービスを提供している。

利用者はアプリでピックアップ地点を指定し、メニューから好みのドリンクを選択。支払いはキャッシュレスで完了し、あとはJagoのバリスタが到着するのを待つだけだ。本格的な技術を持つバリスタがその場で淹れるため、品質の高さも評判を呼んでいる。

また、通常の営業に加えて、企業イベントや地域の集まり、結婚式などの特別な場での出張サービスも提供。インドネシアならではの盛大なパーティー文化に適した柔軟なスタイルが支持を集めている。

手頃な価格で本格コーヒーを提供

インドネシアではスターバックスなどの外資系カフェも人気だが、ジャカルタの店舗では一杯3万ルピア(約290円)以上と高価で、多くの人にとっては贅沢品となっている。一方、Jago Coffeeの価格は8,000ルピア(約78円)からと、インスタントコーヒー並みに手頃な設定となっている。

さらに、Jagoはインドネシア産のコーヒー豆にこだわり、地元産のパームシュガーや茶葉も使用。これまで国内のコーヒー消費の9割を占めていたインスタント市場に対し、「手軽でありながら高品質な本格コーヒー」を提供することで、新たな選択肢を生み出している。

シリーズAで600万ドルを調達、事業拡大へ

Jago Coffeeを運営するPT Satuan Teknologi Berjalanは、2024年4月にシリーズAラウンドで600万ドル(約9億円)の資金調達を実施。このラウンドはIntudo VenturesとBeenext Accelerateが主導した。

調達資金は、自転車の台数を現在の300台から1,500台へと大幅に増やすことに充てられる予定。また、ジャカルタでのサービス提供エリアを現行の7%から50%へと拡大し、より多くの利用者にリーチする計画だ。

競争激化するインドネシアのコーヒーマーケット

インドネシアのコーヒー市場は急成長を遂げる一方で、新規参入も相次いでいる。2023年には国内最大のコーヒーチェーン「Jiwa group」が新ブランド「Sejuta Jiwa」を立ち上げたほか、中国Tencentの支援を受ける「Rindumu Coffee」も市場に参入。2024年4月には「NgopiNgapa」が新たにローンチされた。

国民の9割がイスラム教徒であり、アルコールよりもコーヒーやお茶が好まれるインドネシアにおいて、Jago Coffeeは今後どのように市場をリードしていくのか。低価格・高品質・スケーラビリティのバランスが成長の鍵を握るだろう。