2025年5月23日
絶滅危惧種スマトラサイ、密猟と生息地破壊の危機 アジアの闇市場が横行
アジア地域、特にベトナムや周辺国において、絶滅の淵に瀕しているスマトラサイの密猟が深刻化している。高額で取引されるサイの角を狙った密猟は後を絶たず、加えてアブラヤシ栽培などの大規模農園開発による生息地の破壊が追い打ちをかけ、スマトラサイの生存が危ぶまれている。国際社会は危機感を募らせ、対策の強化を求めている。

国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「深刻な危機(絶滅寸前)」に分類されるスマトラサイは、世界全体でわずか約80頭程度しか生息していないと推定されている。その主要な生息地はインドネシアのスマトラ島やボルネオ島の一部に限られており、その数は減少の一途を辿っている。
密猟の最大の動機は、サイの角が高値で取引される闇市場の存在だ。特にベトナムや中国の一部では、サイの角ががんの治療や解熱剤になるといった誤った認識や、富の象徴として珍重される風習が根強く残っており、高額で違法に売買されている。組織的な密猟グループが暗躍し、最新の技術や武器を用いてサイを狙い、国際的な密輸ルートを通じてアジア各地に流通させている現状がある。
さらに、サイの生息地である熱帯林の破壊も深刻な問題となっている。アブラヤシやゴムなどの大規模農園開発が急速に進められ、サイが生きるために不可欠な森林が大規模に伐採されている。これにより、残された生息地は分断され、サイが繁殖しにくい環境となっている。また、人間の活動による生息地の縮小は、サイと人間との間の衝突を引き起こす要因ともなっている。
これに対し、各国政府や国際的な保護団体は、密猟対策の強化や生息地保全の取り組みを進めている。インドネシア政府は保護区のパトロールを強化し、密猟者に対する罰則を厳格化している。また、消費国であるベトナムでも、違法な取引の取り締まりや、サイの角に医学的根拠がないことを啓発するキャンペーンが行われている。
しかし、密猟の根絶には、需要を完全に断ち切るための継続的な啓発活動と、国際的な連携による密輸ルートの遮断が不可欠である。地球規模での生物多様性の喪失を防ぐため、残された数少ないスマトラサイを守るための国際社会の取り組みが、今まさに試されている。
